刑事がニュース番組に出演!?「劇場型捜査」で連続殺人犯のしっぽを掴め!
あらすじ
神奈川県内で5歳の男児をターゲットにした連続無差別殺人事件が発生!
第一の事件から一年が経過しようとしているのに、被害者は4名になっていたが、有力な手がかりはなく捜査は難航していた。
テレビニュース番組の「ニュースナイトアイズ」が事件を取り上げ、女性キャスターの早津が犯人を完全否定するような発言をする。後日、番組宛に「早津の息子を殺す」と脅迫状が番組に届いた。
捜査に行き詰まっていた警察は、犯人がテレビを見て、脅迫状を送ったことから、捜査担当刑事がテレビに出演し、視聴者から情報を集めることと、犯人を刺激し、さらなるアクションを送らせる狙いで組「ニュースナイトアイズ」に出演し、警察の劇場型公開捜査が始まる。
最初は模倣犯からの手紙など、有力情報はなかったが、ある日、本物の犯人しか知らない内容を記した手紙が届き、犯人とのテレビを通したやりとりが始まった!!
ベテラン刑事、津田長の言葉が沁みウマ!!
津田長は主人公が6年前に失態で、飛ばされた先の足柄署で出会った、ベテラン刑事。
誰にでも声を荒げることなく、穏やかに接し、作中では主人公が唯一本音を曝け出せる存在。
いくつか心に沁みる名言を残しており、それを聞いた時には、感動しました。さらに、新しい気づきをもたらしてくれました。
「犯罪者もみんな人の子なんです。自分の醜さに気づいていない奴が悪あがきしているだけです。だから怖がる必要ないんです。」
素行が悪いチンピラの冨岡は、津田長が新人の頃に起きた殺人事件の犯人でした。慕っていた津田の先輩刑事を刺し殺した冨岡が出所して生活している家を主人公と訪れた時のセリフ
その冨岡は60代なのに、もう80代に見えるほど生気がなく、血気盛んだった若い頃と様変わりしていました。人を殺して人間の道を外した自分を自覚した冨岡は、抜け殻になってしまっており、その様子を見て言ったセリフでした。
どんな凶暴で話が通じなさそうで、怖い人物でも、その人もまた人間であり、今は粗末で乱暴な態度をとっていても、いつか我に返った時に自分の醜さに向き合えなくなるのだと思いました。
世の中に様々な人がいますよね。自分や誰かに嫌なことをしてくる人も、今は自分の醜さに気付かず、悪あがきをしている、ただの人間なのだと思えるだけで、少し視野が広くなる感覚が持てました。
「叩かれたら、誰だって痛いんです。平気そうに見えるのは、叩かれている側が我慢してるからなんだ。」
ライバルニュース番組で女性キャスターをしている美央子に大学時代に片思いし、今も未練たらたらの捜査課長(主人公の上司)の植草が、捜査情報を餌に美央子を自分の女にしようとします。
さらに植草は情報を与えるだけでなく、美央子の番組で主人公をバッシングの対象にすることで、主人公に対する嫉妬を晴そうとします。
主人公の巻島が植草を罠に嵌めて、情報を流していることを認めさせ、植草を捜査から外すことになった時に津田長が植草に言った時のセリフです。
以前、私が好き勝手に言われ、叩かれていた時のことを思い出しました。こちらが何も言い返さなかったら、さらに言ってくる。
自分の言い分が通るまでこちらの思いを聞かずに、なりふり構わずに叩いてこられた時のことを思い出しました。
よく耐えていたな。そして、痛かったな。と思い返し、津田長の言葉に救われた気持ち、わかってもらえた気持ちがして嬉しかったんです。
事件解決!!
テレビを通して犯人にプレッシャーをかけ、犯人がミスを犯し、逮捕、事件は解決しました。
逮捕までの流れも緊張感があり、とても面白かったです。
著者の文章力
警察、テレビ番組のスタッフ、ライバル番組、被害者家族など様々な視点から物語が丁寧に紡がれていきます。
著者の雫井さんは、それぞれの人物を丁寧に描写しておられ、特に様々な行動をとる動機を細かく設定しておられます。
この話には、まだ伏線が・・・
実は6年前に主人公の巻島が失態を起こした、事件の犯人はまだ捕まっておらず、この作品は続編があります。
早速「犯人に告ぐ 2」を聞いています。また終わったら感想を書きます。
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